【香川】築城400年以上の歴史を持つ石垣の名城「丸亀城(まるがめじょう)」
日本100名城にも選ばれている「丸亀城(史跡丸亀城跡)」。慶長2年(1597年)、豊臣秀吉の家臣であった生駒親正(いこま・ちかまさ)、一正(かずまさ)によって築城が進められ、慶長7年(1602年)に丸亀城が完成されたといわれています。その後、築城技術が最も発達した山崎氏の時に石垣の大半を、京極氏の時に天守や大手一の門などをつくり、現在にも残る姿が完成しました。
▲丸亀城は標高66メートルの亀山に築かれた平山城で、別名「亀山城」とも呼ばれている。
▲天守に向かって登っていく道中、北側には美しい瀬戸内海の景色が広がる。視界の先に香川県と岡山県を結ぶ瀬戸大橋を眺めることもできる。
▲かつて藩主が月見をしていたといわれる「月見櫓跡」からは、正面に”讃岐富士”と呼ばれ親しまれる飯野山を望み、周囲には丸亀市街地が広がる。
そんな丸亀城には3つの”日本一”があります!皆さん、それが何か分かりますか?
【香川・丸亀城1】日本一高い石垣
丸亀城の石垣は築城技術が最も発達した頃につくられ、石垣の総高はおよそ60メートルもあり、日本一の高さを誇ります。城内には野面積み(のづらづみ)の石垣や、打ち込みハギ・切り込みハギなど、様々な石積みでつくられた石垣があり、一度に複数の石垣を見ることができます。
▲天守の真下、三の丸から見た石垣の様子(およそ20mの高さ)。丸亀城内で*一層の単独石垣*としては「三の丸坤(ひつじさる)櫓台」が31mと全国2位の高さを誇っている。
また、緩やかな勾配から上にいくにつれて、反り返る石垣の優美な曲線は「扇の勾配」と呼ばれ、高い防御性とともに美しさも兼ね備えています。石垣の中には「△」や「田」など刻印と呼ばれる記号が見られるので、じっくりと石垣を観察してみてください!
▲「扇の勾配」と呼ばれる隅角部の曲線美がよく分かる撮影スポット(北側の正門から見返り坂を登った先、右手側)。
<用語説明>
野面積み…自然石を組み合わせて積み上げる技法
打ち込みハギ…削って加工した石を用いて小さな石で隙間を埋めて積み上げる技法
切り込みハギ…加工して石の合わせ口を精巧に隙間なく積み上げる技法
【香川・丸亀城2】日本一小さな天守
丸亀城は現存する木造十二天守の1つとして国の重要文化財に指定されています。立派な石垣のため、下から見ると荘厳なお城のように見えますが、高さ約15mの3層3階の木造天守で、日本一小さな天守といわれています。実際に中に入ってみるとコンパクトなつくりなのがよく分かります。
▲山上の最高所にある丸亀城天守。日本一小さな天守であるとともに、四国内の木造天守の中では最古と考えられている。
▲天守内では城を防御するための石落としの仕掛けなどが見学できる。急勾配かつ幅の狭い階段の上り下りはスリリング。
【香川・丸亀城3】日本一深い井戸
お城を守備する時や日常生活において欠かせない井戸。亀山(かめやま)で2番目に高い平場・二の丸にある「二の丸井戸」は日本一深い井戸といわれ、水深は約30m、絵図には深さ三十六間(約65m)と記されています。丸亀城築城にまつわる怖い逸話も残っていますが、ここでは内緒にしておきますね…!
【香川】大雨によって石垣が崩壊…。修復の様子が見られる数少ないお城
丸亀城の石垣は2018年7月の西日本豪雨の影響で南西の一部が崩れ、その後の台風に伴う大雨などでもさらに大規模な崩落が相次ぎました。石垣の本格的な修復工事は、全国各地からの募金・寄付金といった支援のおかげで現在も進められています。丸亀市のシンボルである丸亀城を大切な歴史遺産として後世に残すために、引き続き復旧の援助・ご協力をよろしくお願いします!
▲崩落現場には大きなクレーンが立ち、周辺には出土した石材が並べられている。
▲「丸亀城石垣崩落復旧整備事業PR館」には、丸亀城の歴史や石垣崩落の経緯、工事の概要などのパネル展示などを設置。
【石川】さまざまな石垣が壮観!石垣の博物館と称される「金沢城」
▲前田利家像と石川門。
▲金沢城の石垣の大半は、城の南東約8kmにある戸室山(とむろやま)周辺で産出する戸室石(安山岩)を使用。赤っぽい「赤戸室」、青っぽい「青戸室」があり、配色によって独特の雰囲気が醸し出されている。
【石川・金沢城1】左右で積み方が違う「石川門」の石垣
金沢城跡の東に位置する搦手(からめて・裏口)の石川門は、兼六園に隣接することから、もっとも人の往来が多く、金沢城を象徴するスポットです。宝暦9年(1759年)の大火で全焼しましたが、11代藩主・前田治脩の代に再建され、その後も修理を重ねて現在の姿になり、国の重要文化財に指定されています。
▲金沢城の搦手に位置する石川門は、兼六園に隣接。
一の門をくぐった先の枡形(ますがた・方形の広場)には左右で積み方が違う石垣があり、右は「切石積み」、左は「粗加工石積み」の技法で積まれています。
▲右が「切石積み」、左が「粗加工石積み」の技法で積まれた石川門の枡形の石垣。
【石川・金沢城2】「菱櫓・五十間長屋・橋爪門続櫓」の優美な石垣
菱櫓(ひしやぐら)・五十間長屋(ごじっけんながや)・橋爪門続櫓(はしづめもんつづきやぐら)は、平成13年(2001年)に完成した復元建物です。明治時代の焼失前の姿が忠実に再現され、石垣も解体・積み直しが行われました。三の丸広場に面した石垣は「粗加工石積み」で、裏手の二の丸側は「切石積み」の技法で積まれています。石垣の角の部分に施された、ゆるやかに弧を描く算木積み(さんぎずみ)の稜線も優美です。
▲藩主の居所である二の丸御殿を守るための砦・武器庫の役割をした建物で、石落しや鉄砲狭間となる格子窓、白塗漆喰壁や海鼠壁で防火構造になっている。
▲五十間長屋は長さが五十間(約90m)。窓の配置が三の丸側は上下の階層で交互になっているのも、外敵への備え。
▲復元された建物は内部の見学もでき、鉛瓦や漆喰壁など、再現に用いられた伝統技法などの展示も行われている。
※年中無休
【石川・金沢城3】お殿様のプライベートガーデン「玉泉院丸庭園」の石垣
「玉泉院丸庭園(ぎょくせんいんまるていえん)」は、3代・前田利常が作庭してから廃藩まで、歴代の加賀藩主が愛でた池泉回遊式の大名庭園です。明治期に廃絶しましたが、平成27年(2015年)に発掘調査や絵図・文献などに基づいて整備・再現されました。
必見は「色紙短冊積石垣」です。上部に滝を組み込んだ特別な石垣で、滝口には黒色の坪野石でV字形の石樋をしつらえ、落水の背後には色紙形(正方形)の石材と短冊形(長方形)の戸室石を段違いに配しています。城郭石垣の技術と庭園のデザインが見事に融合した、金沢城石垣の傑作といわれています。
▲饗応の場として活用された「兼六園」に対し、「玉泉院丸庭園」は藩主のプライベートな庭園だったと考えられ、池底から周囲の石垣最上段までの高低差が22mもある立体的な造りになっている。
▲庭園の全景を眺められる休憩所「玉泉庵」(写真右側)があり、茶室で抹茶と生菓子を味わうこともできる。
【石川・金沢城4】バラエティ豊かな石垣群
ほかにも、六角形の「亀甲石(きっこういし)」が組み込まれた土橋門の石垣や、石の表面に◯に十文字などの刻印が刻まれた石垣、城内でもっとも古い技法が用いられた東の丸北面石垣など、多種多様な石垣を随所で見ることができます。
▲六角形の石「亀甲石(きっこういし)」は、水に親しむ亀を表したもので、防火の願いが込められているそう。
▲藩主の側室たちの住まいがあった数寄屋敷の付近の石垣。石の表面には◯に十文字など、さまざまな形の刻印が刻まれています。
▲自然石や荒割りしただけの石を緩い勾配で積み上げた「自然石積み」になっている東の丸北面石垣は、金沢城の初期の姿を伝える貴重な存在。
▲東の丸北面石垣に隣接する鶴の丸広場の「鶴の丸休憩館」。菱櫓・五十間長屋・橋爪門続櫓・橋爪門を一望できる穴場的なビュースポット。
金沢城公園では特色ある石垣をめぐる城内ルート、城外周ルートが整備され、ルートMAPや案内板を頼りに石垣めぐりを楽しめます。また、観光ボランティアガイドさんに案内してもらうと、工法の違いなども詳しく解説してくれます。石の積み方・加工の仕方を知ると、積まれた時代の技術や社会情勢、美意識などがうかがえます。金沢城を訪れるのが初めてではない人も、ぜひ石垣に注目して園内を周遊してみてください。
おわりに
今回は、「石垣の名城」と称される2つのお城の魅力をご紹介しました!香川県・丸亀城と石川県・金沢城をすでに訪れたことがある人も、石垣に注目して見るとまた違った魅力を知ることができるかも!ぜひ両県に足を運んで、お城の石垣めぐりを楽しんでみてはいかがでしょうか。
石川県の「ほっと石川旅ねっと」でも連携特集を掲載中!
うどん県旅ネットでは紹介しきれなかった石川県のスポットや情報を掲載しておりますので是非併せてご覧ください!
ほっと石川旅ねっと 金沢城と丸亀城~前編:石垣の名城をめぐる旅~はこちら>>
ほっと石川旅ねっと 金沢城と丸亀城~後編:石垣の名城をめぐる旅~はこちら>>