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香川県医師会 医療レポート

健康な暮らしに役立つ医療提供で 県民の健康保持・増進を目指す

新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが、2023年5月8日に「5類」に移行したことに伴い、マスク着用などの感染対策は、個人の判断が基本となりました。一方で感染再拡大の懸念や季節性インフルエンザ、アデノウイルスといったトリプルデミックへの備えが必要な時季です。そこで香川県医師会の久米川啓会長に、今後の医療体制における役割などについて聞きました。

 

※こちらのインタビュー内容は月刊ナイスタウン2023年12月号時点のものになります。

 

香川県医師会 久米川 啓(くめがわ はじめ)会長

1978年東京医科大学卒。社会保険(現独立行政法人地域医療機能推進機構)山梨病院、香川医科大学医学部(現香川大学医学部)などを経て、1993年医療法人社団啓友会久米川病院副院長、1995年同院院長、2014年から香川県医師会会長に就任するとともに同院名誉院長も務める。

 

【資格】

日本外科学会認定医、日本消化器内視鏡学会認定医及び認定専門医、日本超音波医学会認定超音波専門医、医学博士など。

 

【役職】

香川県学校保健会会長、香川大学医学部医学科臨床教授、香川県医療審議会会長、香川県地域包括ケアシステム学会会長など。

 

ー新型コロナウイルス感染症に対する今後の医療体制における対応は?

2020年の流行初期からウイルスが変異を繰り返してきた結果、全体的に重症化リスクが低くなっている傾向にあリます。しかし、ウイルスそのものが消えたわけではないので、当面は現状の医療提供体制を維持し、感染対策をしながら、うまくウイルスと付き合っていく必要があります。

 

先日、東京で開催された都道府県医師会長会議でも、コロナの収束に向けて、世界的に総括に入る時期にきていることが確認されました。例えば、コロナ感染拡大によってどういう影響があったのか、ワクチンの効果はどうだったのか、各国ではどのような医療体制が効果的だったのかなどを検証しています。コロナ禍では、「病床数が少ない」「医療崩壊があったのではないか」と問題視されたこともありましたが、そもそも世界と日本の病床数の仕組みが違います。海外のように、救急用の病床のみ受け入れるのとは異なり、日本の場合は急性期から慢性期までのベッドが用意されており、コロナ患者の増加に応じて、その病棟を転換して受け入れをしてきました。

 

さらに世界の致死率を比較してみると、イギリス、フランスなどの欧州が高く、入院できず自宅で死亡される人が多かったようです。それに比べて日本では、各先生方の協力もあり、死亡者数が世界的にみて少なく抑えられています。

 

ー日本は海外に比べて医療保険制度が充実しているのでしょうか?

日本では保険証さえあれば、平等に必要な医療サービスを、少ない費用負担で受けることができます。それは国民皆保険(こくみんかいほけん)があるからです。おかげでわが国は、世界有数の長寿国を実現し、世代や生活環境に応じて公的医療保険のしくみが確立されています。

 

このように医療保険制度は海外に比べて優れている一方で、現在進行中の少子高齢化社会によって、今後の制度維持が困難となっており、大きな課題となっています。

 

ーこれからの若手医師に求めるものは何ですか?

医療とは、患者さんの病気を治すことだと思って一生懸命頑張っている人が多いのですが、決してそれだけではありません。患者さんが、病院や診療所に来て何を求めているかというと「安心」を求めているのです。 治療について、患者さん本人が必要な情報や説明を理解したうえで判断する「インフォームドコンセント」も大事ですが、それだけではいけません。例えば、患者さんにがんが見つかったときに、明確な治療方針を提案したうえで、安心感を与える言葉をかけることも大切です。

 

医療とは、患者さんと対等の立場で、その気持ちを傾聴し相談にのることです。これからの医師は、患者さんが何を望んでいるのか、どういう治療を望んでいるのかなどその方の人生に寄り添うことが重要になると考えます。

 

ー地域医療を強化するために、県民や地域社会と協力すべきことは?

国は2025年を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立した生活支援を目指しており、高齢者が住み慣れた地域で、安心して暮らし続けることができるような、「地域包括ケアシステム」の構築が急がれています。その基本となるのがACPです。

 

ACP(アドバンス・ケア・プランニング)とは、人は生きている限りいつかはくる「その時」のために向けて行う人生会議のようなものです。例えば患者さんが「どういう医療を受けたいか」「どういう治療は受けたくないか」「どういう最期を迎えたいか」といったことを、前もって元気な時から大切な家族や友人に表明していただき、医療・ケアチームと共有できるシステム作りです。

 

最近の傾向は、病気を治す、生かすことを使命に考えている医師が多くなっています。確かに、病気を治す、良くすることは医師の使命でしょう。しかし私は、医師として一番大切なのは、「患者さん自身が、その人にふさわしい死を選べること」をサポートできることではないかと思っています。

 

ー任期中に実現させたい目標はありますか?

核家族が多くなった現代では、一人暮らしの高齢者が多いなか、孤独死する人が増加傾向にあります。そういったことを防ぐためにも、地域のコミュニティづくりができる仕組みを作っていきたいです。

 

例えばペットを活用した仕組みを考えています。ペットを飼うことにより、寂しさを紛らわせることはもちろん、散歩で身体を動かすことによって、体力の向上や地域の人々とのコミュニケーションによるメンタル面での向上が期待でき、健康的に過ごせるようになるのではと思います。行政はもとより、動物を支援するボランティア団体などと情報を共有しながら、地域ぐるみでバックアップしていける環境を構築させたいです。

 

ー医師会はどんな役割を担っているのでしょうか?

コロナ禍により、医療体制を維持することの重要性が、多くの人に再認識されたのではないでしょうか?

 

医師会とは、地域に最も近い郡市地区医師会、各都道府県に一つずつ組織された都道府県医師会、そして全国組織の日本医師会と三層の構造となっています。

 

まず日本医師会では、国に対して医療政策に関わる進言をしたり、医師向けの生涯教育制度の実施や新興感染症などに対応できる医師の育成や研修など、幅広い活動を行っています。次に香川県医師会では、学校保健、産業保健、健診関係など、県民の健康維持・向上を図るために、様々な行政との折衝を行っています。さらに郡市地区医師会では、予防医療や在宅医療など、地域住民の健康維持のために、重要な働きをしています。

 

香川県医師会は、構成員である医師の連携を密にし、研修などによって資質の向上に努め、真に県民に必要とされる医療の提供を目指します。

 

 

今後は学校教育にも注力!

香川県医師会は、県民の健康保持・増進を目的に、学校保健、産業保健、健診・がん検診などに力を入れています。なかでも特に力を入れたいのは学校教育です。がん教育、性教育、禁煙教育などありますが、一番大切と思っているのは「命の大切さを伝える教育」です。

 

かつては、自宅での出産や看取りなどの家族の生死を通じて、人間がどう生まれ、死んでいくのかを感じることができたのですが、現在は、「命」を感じる体験が薄くなっています。それだからこそ、「命」の教育が必要なのです。

 

 

香川県医師会と百十四銀行が医業承継で連携

香川県医師会と百十四銀行は、医業承継に関する連携協定を結んでいます。後継者を探している医師と、開業を目指す医師について情報を共有しマッチングする仕組みです。香川県内では医師の老齢化や後継者不足が進んでおり、若手の医師の確保推進のためにも、スムーズな医業承継で地域医療の維持を目指します。

 

 

かがわ医療情報ネットワーク(K-MIX R)

患者さんの同意のもと、香川県内のK-MIX R参加医療機関で診察情報が共有できます。

医師などが診察や緊急時に、他の施設の記録 (治療経過、検査結果、処方内容)を閲覧し質の高い医療サービスに役立てます。

施設ごとに受ける問診や検査、重複した薬の処方などを減らし、患者さんの負担を少なくします。

 

一般社団法人 香川県医師会

〒760-0011 香川県高松市浜ノ町73-4

TEL:087-823-0155

FAX:087-823-0266

https://www.kagawa.med.or.jp/

 

 


 

 

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